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活動事例

活動実績
演技ワークショップ 関西演劇ワークショップ Vol.4「インプロヴィゼーション」
case#001
 
後援: ブリティッシュ・カウンシル
期間: 1999年10月27日(水)〜31日(日)
時間: 11:00〜17:00 
会場: 神戸アートビレッジセンターリハーサル室2
     
    □講師略歴
□どんなことがワークショップで指導されたのか
     

■講師略歴
クリス・バートン-Chris Barton-は英国ロイヤルナショナルシアターの教育部門で8年以上にわたって数多くのプロジェクトに関わってきました。たとえば、小学生がシェイクスピアの作品を上演する企画の演出家、青少年のためのワークショップの指導者、社会人・ビジネスマンのためのワークショップの指導者など。また演出家としてもフリンジ、ウエストエンド、そしてナショナルシアターなどで活動を行っています。1994年に「インスペクターコールズ」日本公演のアソシエイト・ダイレクターとして一度日本を訪れており、今回が2回目の来日です。
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■どんなことがワークショップで指導されたのか
 「インプロヴィゼーション」-即興とはどんなものなのでしょう。日本ではエチュードとよばれる方法がありますが、一口にインプロヴィゼーションといってもいろいろなメソッド(システム)や方法が存在し、様々なテクニックがあります。
今回のワークショップでは、「インプロのショーケース」として、一つの手法にとらわれるのではなく西洋演劇で使われているさまざまなアプローチの方法を体験してもらうことを目的としています。どのような共通点とどのような差異があるのか、そして自分のあった方法がみつかるかどうか、そんなことを考えながら行われたワークショップの報告です。

 10月27日から5日間、ワークショップリーダーのクリス・バートン-Chris Barton-と参加者15名が毎日5時間のワークショップを行いました。第1日目、いつもでしたらまず最初にリーダーの紹介をするのですが、クリスは「参加者が集まったらなんの説明なしに始めるから。僕はほとんど言葉を使わずに40分ほどゲームをするので」と通訳を使わずに参加者と遊び始めました。みんなも一瞬戸惑いながら、しかしすぐに遊びに夢中になりました。円になって相手をコピーするゲーム、手を叩いて回すゲーム、「おちゃらかほい」みたいなゲーム、「zip zap boin」というゲームやいろんなポーズで歩き回り「hello」と挨拶を交わすゲーム等々、クリスは自分でやって見せたりジェスチャーでやり方を示すだけで、みんなは遊び方を自然に理解し参加していきます。みんな大いにエンジョイし楽しいゲームの数々に大笑いしている内に40分が経過、「はじめまして、僕はクリス・バートンです」と言葉を使ってのワークショップが始まりました。クリスは参加者一人一人に名前と、どうしてこのワークショップに参加したのかを質問したのですが、みなさん結構即興が苦手だからという答え(即興大好きという人もいましたが)。「即興ってこわい」と思っている人が多かったみたいです。クリスは「私たちは生活しているなかで毎秒すべての時間に即興しているのです。朝、目覚めたとき「うん、私は自分に何が起きるのか、今日何を喋るか全部知っているよ」とは誰も思わないでしょう?雨が降ってきたり、誰かと道で出会ったりと自分の身の回りに起こる日常の全ての出来事に反応して、その事に対して即興で対応しているのです。しかし演劇となると突然「即興」というように何かものすごいことのようになるので、みなさん「あ、苦手」と思うのではないでしょうか?舞台の上で「即興を上手くやらなくては、賢くやらなくては」と思いながら心の中では逃げ出したくなるのではないでしょうか。これからの5日間では即興の幾つかの違うアプローチをやっていきます。色々な方法を通して、演劇の中で即興をどのように使うことが出来るのかを探してゆきましょう。エクササイズも沢山やりますので、それによって即興がより身近に、よりやりやすくなると思います」

クリスはどの即興にも必要とされるのが次の5つの意識なのだと言います。

「offer-オファー(現れる・提供される)」
「accept-受け入れる」
「ブロックしないこと」
「自分のステイタスを知ること」
「驚きを楽しむこと」

 即興ではその場で提供される言葉や動き、つまり一つの情報を積み上げていきながらシーンを作っていきます。もし、相手から出された情報をブロックしてしまえば、そこで物事が発展するチャンスを奪ってしまうのです。

 プレゼントというテーマで2人一組、片方が何か相手にプレゼントを上げるというシチュエーションで即興を行います。送り手はどのくらいの大きさか重さかなど動きで表現して受け手に情報をあげます。でも、まだこの段階では受け手はプレゼントが何か分かっているわけではありません。送り手からの情報-大きな重いものーという「オファー(提供される)を「アクセプト(受け入れて)」します。自分のイマジネーションで、たとえばプレゼントをあけて植木鉢だとし、送り手に「植木鉢かぁ」という情報を渡します。そこでもし、送り手は自分は陶器の花瓶と思って渡してたとしても、「ブロックしない」こと。「驚きを楽しんで」プレゼントは植木鉢として話を進めていきます。しかし受け手は「私の欲しかった植木鉢をは違う」というまた新しい情報を提供します。送り手は「え、違うの?」と話を進めていき、次第にケンカになるという即興が出来上がります。自分一人の頭の中で勝手に話を作るのではなく、提供される情報のやりとり、コミュニケーションを通じてまさにその瞬間に生まれてくる表現、演技-アクトではなく反応-リアクトである即興は行う方も、見ている観客もわくわくするものなのです。毎日沢山のエクササイズと共に実践した即興へのアプローチの幾つかをご紹介します。

【スタニスラフスキーのメソッド】
   感情の記憶を使って短いシーンを作っていく即興やストリンドベリの戯曲「令嬢ジュリー」を使い、テキストを「Actioning」(アクションに応じてシーンをユニットわけし、その部分の目的・行動を明確にする)で分析し、シーンを作る即興。セリフが予め書かれたものであっても即興のアプローチは可能だということを見ていくため、「令嬢ジュリー」の戯曲の1部を使いました。この作品では令嬢ジュリー、従僕のジャン、コックでジャンの婚約者のクリスティンの3人が登場人物です。まずジャンというキャラクターを作る場合、スタニフラフスキーの手法「if I was~もし私が〜ならば」を使って、各自自分のイメージではジャンはどんな動物か考え、その動物を加えたジャンとして歩き回ります。またジャンならどんな風に髭を剃るか、どのように座るかという行動の特徴を探していきます。ステイタスの即興や「動詞と身体の部分」の即興も応用し、さらに動詞は何か、内的ステイタスと外的ステイタスはどのレベルかなど付け加えたキャラクターに、Actioningを使って短いシーンを作りました。ほんの3ページほどの短いシーンでも、キャラクター作りを色々な手法を使って深めてゆくと、その登場人物の性格や内面がハッキリと現れ、戯曲が深まって表現されていきます。この作業は役者が自分の役作りのために役立つもの。選んだもので上手く行かなければ、違うものを選択して使えばいいのです。
  【コメディア・デラルテ的な即興を使っての登場人物の力関係-ステイタスをハッキリと意識しながらシーンを作る即興】
   カードを使ったステイタスゲームで肩慣らしの後、召使いと主人というコメディア・デラルテ的なシチュエーションを使っての即興。お互いのステイタス(力関係)をハッキリと提示していくと観客にはとても分かりやすいシーンが出来ます。また、同じ召使いと主人でもナマケモノの召使いと厳しい主人とさらに情報を積み重ねると、より多彩な場面が生まれてきます。ステイタスは家庭の中、友人関係、上司と部下、恋人同士などなど色々な場面に応用できます。
  【マスクを使っての即興】
   全面のマスクを付けると顔の表情で演技が出来ません。たよりは自分の身体。そこでマスクを付ける前に沢山のエクササイズを行いました。熱さ・寒さを感じるエクササイズ、2人一組での一本釣りのエクササイズ、いろんな家族の記念写真、1つの「動詞と身体の各部分」を書いた紙を1枚ずつ渡されて、動詞と身体の部分を表現するキャラクターとしてパーティーに出席するという即興など、よりハッキリとした感覚とフィジカルな表現力を身につける目的で行いました。「動詞と身体の部分」の即興では、たとえば「大胆」と「額」では「額」にエネルギーの集中を意識し、その部分がその人の行動を導くように、また「大胆」という動詞で少し前のめり(額がリードする形で)に大股でドスドス歩くキャラクターを作るという具合。あんまり誇張するととっても滑稽ですが、ほどよく加減するとなんだかとっても個性的なキャラクターが出来上がります。この手法はたとえば自分の役に違った表情を持たせるときにアプローチしやすいテクニックになっています。そしていよいよマスクを付けての即興です。ドアを開け、中に入り、観客の前に出る、しばらくして引っ込むというシンプルなシチュエーション。みんな、マスクを付ける際もその表情を自分の中に取り込むため時間を少しかけて準備します。スタジオのドアから中にはいると観客が待ちかまえています。さあ、どうする?マスクで覆われているので、声は出せません。表情も作れません。みんな「何かしなくては」といろいろと動いて試みるのですが、やればやるほど面白くない、やればやるほど観客が離れていく。もがいた挙げ句、フッと力が抜け何もしないその瞬間、観客から笑いが起こりました。
  【ディバイジングの手法を使っての即興】
   キーワード「家族の危機」を表す形を5人グループで話し合いながらまずストップモーションのタブロー(形)を作って、そこでできた形を中心に据え、それに肉付けするよう前後のシーンを付け加えて短いドラマを創る。タブローは、ドラマのクライマックスなので一度フリーズして強調する。こうやって作業を行う場合も「オファー」「受け入れる」を忘れないこと。最終的に出来たのは個々にきちんと起承転結がある豊かなショートドラマでした。
  【ストーリーテリングを即興でおこなう】
   童話のあらすじを使い、グループとしてお互い何が行われているかを意識し、聞きあいながら物語を即興で作り上げる。今までやった方法を応用、小道具や衣装も使って物語を作り上げました。

 以上、この5日間の間に色々な即興のアプローチを「お味見」しました。
文責:川南 恵(1999年11月)

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