December 18, 2003
あなたは何本見ましたか?
昨日のコラムで「稽古場や劇場ばかりにいないで、もう少し世の中を見渡してみませんか?」と書きましたが、訂正します。
「”自分の公演のために”稽古場や劇場ばかりにいないで」
他の芝居を見に行くために劇場へ頻繁に足を運ぶのは、当然です。
この業界でやっていこうとするなら「芝居を見る」ことが必要だからです。
先日、ゼミの面接で演劇をやっていきたい若い人に、年間何本くらい芝居を見るのかを聞いてみたところ、「今年は10本位見ました」と言った人がいました。
10本!
この業界で『演出家になりたいです』『作家になりたいです』『俳優になりたいです』と話す20代の人が、たったの10本です。
やりたい気持ちは本気なんでしょうけれど、それをかなえるための手段が間違っているなと感じてしまいます。小劇場で活動する若い人にはとにかく自分が舞台に立つことばっかりにかまけて、他の芝居をぜんぜん見ない人がとても多いです。また、見に行く芝居も、友人が出ているからなどの自分のテリトリー内、狭い世界でのものが多いようです。
どんな仕事をしていくにも20代はとにかく学ぶ時期ではないでしょうか?この業界でやっていく場合、この年代に何を「見た」か、吸収したかが、その後の人生を大きく左右すると言っても過言ではないでしょう。演劇は総合芸術です。勉強することはたくさんたくさんあります。文学でも音楽でも美術でも、クラシック(古典)からコンテンポラリー(現代)まであらゆるジャンルのものを見ること、知ること、学ぶことは決して無駄にはならないのです。それどころか、その蓄積が十分にないと途中で「息切れ」してしまいます。
私は舞台の裏方として仕事していますので、舞台に立つ俳優の気持ちはよくわからないんですが、昔、美術家のアシスタントをしていた時代に、座席数2300あまり劇場の舞台に1人で立ってみて、開演前のカラの客席を見渡したことがあります。2300人の視線を想像してみたいと思って立ってみたのです。凄い空気を感じました。カラの客席でそうなのですから、スポットライトをあびて満席の観客に見られるというのはとんでもない高揚感を得られるのだろうと思いました。きっと若い人達が芝居にでるのに夢中なのもそんな気分を100分の1でも味わえるからなのだと思います。でも、「気分」で続けられるほどこの業界も甘くはないのです。
どうか、沢山芝居を見に行って下さい。お金も時間もかかりますが、これは自己投資です。
”1年間、舞台に立たないで、見ることだけに徹する”
今これを実行することでどんなメリットがあるかを一度、じっくり考えてみてはどうでしょう?
投稿者 川南 恵 : December 18, 2003 04:56 PM